十勝の放牧豚「どろぶた」とは?自然の中で育つ豚肉の特徴とおいしさ

十勝の放牧豚「どろぶた」とは?自然の中で育つ豚肉の特徴とおいしさ

北海道・十勝は、小麦や豆類、乳製品、肉など、さまざまな農畜産物が生産される地域です。帯広では、甘辛いタレで焼いた豚肉をご飯にのせる豚丼が親しまれており、豚肉は十勝の食文化を語るうえで欠かせない存在となっています。そんな十勝の豚肉の中でも、特徴的な飼育方法で知られているのが、株式会社エルパソが生産するブランド豚「どろぶた」です。

どろぶたは、帯広市に隣接する幕別町忠類の牧場で育てられています。広い放牧地で豚が歩き、土を掘り、泥の中で休む。そうした豚本来の行動を取りやすい環境が整えられていることが、どろぶたの大きな特徴です。また、脂に含まれるオレイン酸の割合にも独自の基準が設けられています。その脂の特徴から、オリーブオイルになぞらえて紹介されることもあります。

どろぶたはどのような環境で育ち、一般的な豚肉とは何が違うのか。飼育方法や肉の特徴、おすすめの食べ方について紹介します。

十勝・幕別町で育つ「どろぶた」

どろぶたを育てているエルパソ牧場は、北海道十勝地方の幕別町忠類にあります。牧場では広い土地を活用し、成長した豚を24時間放牧しています。豚たちは放牧地を自由に歩き、鼻先で土を掘ったり、草の根や木の実を探したり、日陰で休んだりしながら過ごします。ただし、生まれた直後からすべての豚が屋外で生活しているわけではありません。子豚の時期は専用の建屋で衛生状態や体調を管理し、成長に合わせて屋外の環境に慣らした後、放牧地へと移されます。

成長段階に応じて適切に管理しながら、十分に育った豚には広い環境を用意する。単に屋外に放すのではなく、豚の健康状態を見ながら飼育環境を変えている点も、どろぶたの生産における重要な部分です。

「どろぶた」という名前の由来

どろぶたという名前は、豚たちが泥の中に入り、体を泥まみれにして過ごす姿から付けられました。泥の中で過ごす様子を見ると、汚れているように感じる人もいるかもしれません。しかし、泥浴びは豚にとって不自然な行動ではありません。豚は汗をかく能力が低く、暑い時期の体温調節が得意ではない動物です。そのため、泥や水の中に入って体を冷やします。泥が皮膚を覆うことで、日差しや虫から体を守る役割もあると考えられています。

また、豚は鼻先を使って地面を掘り、食べ物や気になるものを探す習性を持っています。放牧地で見られる泥浴びや土を掘る行動は、豚が本来持っている性質の一つです。「どろぶた」という名前には、豚が自然に近い環境の中で、自由に行動する姿がそのまま表れています。

豚が行動を選べる放牧環境

一般的な養豚では、温度や衛生状態を管理しやすい豚舎の中で飼育されることが多くあります。品質を一定に保ち、効率よく育てるために確立された方法です。一方、エルパソ牧場では、広い放牧地で豚が行動できる環境を採用しています。豚たちは、歩く場所や休む場所を自分で選びます。土を掘る豚もいれば、群れで移動する豚や木陰で眠る豚もいます。

近年、畜産の分野では「アニマルウェルフェア」という考え方が重視されています。これは、家畜を単に生産物として扱うのではなく、適切な食事や水、衛生管理、病気への対応に加え、その動物が本来持っている行動を取りやすい環境を整えるという考え方です。

放牧だけで、豚の健康や肉質のすべてが決まるわけではありません。しかし、豚が歩いたり、土を掘ったり、休んだりする行動を選べることは、どろぶたの飼育環境を特徴づける要素の一つです。

どろぶたの脂がオリーブオイルに例えられる理由

どろぶたについて紹介される際、「脚の生えたオリーブオイル」という印象的な表現が使われることがあります。これは、豚がオリーブオイルと同じ成分でできているという意味ではなく、どろぶたの脂に、一価不飽和脂肪酸の一種であるオレイン酸が多く含まれていることを表した比喩です。

オレイン酸は、オリーブオイルの主成分として知られている脂肪酸です。エルパソでは、脂肪酸を測定し、オレイン酸の割合が45%以上となった豚を、どろぶたの出荷基準としています。豚脂の硬さや口当たりには、脂肪酸の構成が関係します。一般的に、不飽和脂肪酸が多い脂は、飽和脂肪酸が多い脂と比べて融点が低くなる傾向があります。そのため、どろぶたの脂は、なめらかな舌触りや口の中での溶けやすさ、穏やかな甘みが特徴として紹介されています。

ただ、豚肉のおいしさは、オレイン酸の割合だけで決まるものではなく、品種や飼料、飼育環境、部位、保存状態、調理方法など、さまざまな条件が影響します。オレイン酸45%以上という基準は、どろぶたの特徴を示す一つの指標と考えるのが適切です。

しっかりとした赤身と脂身のバランス

どろぶたは、一般的な出荷豚と比べて大きく育てられます。公式サイトでは、放牧されている豚は170~180kgほどまで成長すると紹介されています。十分な時間をかけて大きく育てることで、ロースやバラなどの精肉だけでなく、ハムやベーコン、ソーセージなどの加工品にも適した肉を確保できます。

どろぶたの肉は、脂身だけが特徴というわけではありません。赤身には豚肉らしいうま味があり、脂身と一緒に食べることで、両方の味わいを楽しめます。特にロースやリブロースは、赤身と脂身の違いが分かりやすい部位です。表面を香ばしく焼き、加熱しすぎないように仕上げると、肉の食感と脂の風味を感じやすくなります。

もちろん、豚肉は中心部まで十分に火を通す必要があります。そのうえで、必要以上に長く焼きすぎないことが、おいしく仕上げるポイントです。

飼育から加工までを一元管理

どろぶたの特徴は、放牧による飼育だけではありません。エルパソでは、豚の飼育に加えて、精肉の加工やハム、ソーセージ、生ハム、サラミなどの製造、商品の出荷までを一貫して行っています。生産から加工、販売までを同じ事業者が管理することで、育てた豚の特徴に合わせた商品づくりができます。

例えば、ロースやバラは精肉として販売し、異なる部位はソーセージやベーコンなどに加工する。それぞれの部位に合った使い方を考えられることも、一貫生産の強みです。また、どのように育てられ、いつ加工された肉なのかを管理することは、品質を安定させるうえでも欠かせません。

単に豚を育てて出荷するのではなく、食べる人の手元に届くところまで考えていることが、エルパソのものづくりの特徴です。

白サラミやソーセージなど加工品も充実

どろぶたは精肉だけでなく、加工品にも利用されています。ソーセージやベーコン、生ハム、サラミなど種類が多く、家庭で手軽に食べられる商品から、ワインやビールと合わせて楽しめる商品までそろっています。中でも特徴的なのが、表面を白カビで覆った「白サラミ」です。

白カビを利用したサラミは、乾燥や熟成によって独特の香りと味わいが生まれます。どろぶたの脂や赤身と、サラミの塩味、香辛料の風味を一緒に楽しめる商品です。薄く切ってそのまま食べるほか、チーズやパンと合わせたり、ワインや地ビールのおつまみにしたりするのもよいでしょう。どろぶたの肉そのものを楽しみたい場合は精肉、手軽に味わいたい場合はソーセージ、独特の熟成香を楽しみたい場合は白サラミというように、好みに合わせて選べます。

帯広の「ランチョ・エルパソ」で味わう

どろぶたを現地で味わいたい人には、帯広市にある直営レストラン「ランチョ・エルパソ」があります。ランチョ・エルパソは、どろぶたを生産するエルパソの原点となったレストランです。店では、どろぶたのステーキやハンバーグ、自家製ソーセージなど、精肉と加工品の両方を使った料理が提供されています。

肉の特徴を分かりやすく味わいたい場合は、ステーキなどのシンプルな料理がおすすめです。赤身と脂身を一緒に食べることで、肉のうま味と脂の口当たりを確かめられます。複数の加工品を食べ比べたい場合は、ソーセージの盛り合わせも選択肢になります。

メニューや営業時間は変更されることがあるため、訪問する前に公式サイトなどで最新情報を確認しましょう。

どろぶたはお取り寄せでも楽しめる

北海道まで足を運ぶのが難しい場合は、公式オンラインショップなどからどろぶたをお取り寄せできます。ロースやバラなどの精肉をはじめ、豚丼用の味付け肉、ソーセージ、ベーコン、生ハム、白サラミなど、さまざまな商品が販売されています。初めてどろぶたを食べる場合は、赤身と脂身のバランスを味わえるロース肉がおすすめです。

フライパンで焼く場合は、冷蔵庫から出した肉をすぐに強火で焼くのではなく、肉の状態を見ながら表面を香ばしく焼き、火加減を調整して中心まで加熱します。豚丼用の商品なら、フライパンで焼いてご飯にのせるだけで、十勝らしい豚肉料理を家庭で楽しめます。

贈り物には、精肉とソーセージが組み合わされたセットや、複数の加工品を食べ比べられるセットも選びやすいでしょう。

どろぶたに関するよくある疑問

どろぶたは生まれたときから放牧されていますか?

生まれたばかりの子豚は、専用の建屋で体調や衛生状態を管理しながら育てられます。その後、成長段階に合わせて屋外環境に慣らし、放牧地へ移されます。

泥の中で育つと不衛生ではありませんか?

泥浴びや土を掘る行動は、豚が本来持っている習性です。一方で、家畜としての健康管理や加工時の衛生管理は別途必要です。エルパソでは、飼育から加工、出荷までの工程を管理しています。

オレイン酸45%以上とは何ですか?

豚の脂肪を構成する脂肪酸のうち、オレイン酸が占める割合を示したものです。エルパソでは、測定値が45%以上となった豚を、どろぶたの出荷基準としています。

どろぶたは健康に良い豚肉ですか?

オレイン酸は一価不飽和脂肪酸ですが、どろぶたを食べるだけで健康状態が改善するとはいえません。豚肉の脂質であることに変わりはないため、食事全体のバランスを考えて適量を楽しみましょう。

十勝の自然と生産者の考え方が表れる豚肉

どろぶたは、十勝の広い土地を生かし、成長した豚を24時間放牧して育てるブランド豚です。豚が土を掘り、泥浴びをし、歩く場所や休む場所を選べる環境を整えていること。そして、飼育から加工、出荷までを一貫して管理していることが、どろぶたの特徴です。また、オレイン酸45%以上という独自の出荷基準を設け、脂の特徴を数値でも確認しています。

十勝の自然を生かした飼育環境、豚の行動に配慮した育て方、脂肪酸の測定、加工までを管理する生産体制。その積み重ね自体が、どろぶたならではの価値です。帯広を訪れた際にはレストランで、遠方に住んでいる人はお取り寄せで、十勝の放牧豚の味わいを確かめてみてはいかがでしょうか。

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