【年に一度のお楽しみ】行者にんにく(アイヌネギ)って、どうしてこんなにおいしいの?

【年に一度のお楽しみ】行者にんにく(アイヌネギ)って、どうしてこんなにおいしいの?

「行者にんにく」はネギ科ネギ属の多年草。北海道では早春に採れる山菜として知られていますが、最近は栽培技術が確立して、栽培物も出回っています。ニンニクに似た臭いがしますが、栄養は満点!爽やかなニンニクの香りは餃子の具として注目を浴びています。この記事では北海道に多く自生する行者にんにくについて解説します。

行者にんにくの強烈な魅力:北海道のお花見に欠かせない香り高い食材

 

行者にんにくの特徴は、なんといっても独特の香りと味です。ニンニクと同じ香味成分の「アリシン」を多く含んでいるため、ニンニクやニラなどと同様の、またはそれ以上の臭いがします。その臭いは強烈に、ニンニク好きの食欲をそそります。

北海道のお花見は「桜の木の下でジンギスカン」というのが定番ですが、お花見の時期と行者にんにくの旬が重なるため、ジンギスカンに行者にんにくを入れて食べるというのが“北海道流”のお花見です。アルコールと一緒についつい食べ過ぎてしまいますが、食べ過ぎると翌日は息だけではなく皮膚からも臭いを発します。この臭いが強いがために行者にんにくを敬遠する人もいます。

行者にんにくの由来と別称:アイヌネギとも呼ばれる北海道の山菜

行者にんにくは、修行僧が食べていたことで「行者」、臭いがニンニクにいていることからこの名がつけられました。北海道の先住民族アイヌの人たちが好んで食べていたことから、地元では「アイヌネギ」とも呼ばれますが、いずれも同じものです。

北海道の幻の山菜、行者にんにくの旬と採取地:乱獲による希少性と群生する場所

渡島、桧山、胆振地方など、北海道では比較的温暖な南部の地域では3月から、道東の山間部など、春の到来が遅い地域では4月下旬から採れ始め、6月中ごろまでが旬です。斜面に生えることが多いですが、川の近くなど水分が豊富ならば平地にも生えます。近年は山菜ブームの影響で乱獲が進み、太くてみずみずしい行者にんにくは山奥に入らなければなかなか採れず、今や「幻の山菜」と言われています。

行者にんにくの健康パワー:アリシン豊富で疲労回復・ダイエット効果も期待

行者にんにくには体に良い健康成分や疲労回復、ダイエット効果が得られる成分が豊富です。その筆頭が「アリシン」です。行者にんにくには、ニンニクのおよそ4 倍ものアリシンが含まれています。アリシンは強い抗菌・抗カビ作用をもち、強力な殺菌作用と共に疲労回復に欠かせないビタミンB1 の吸収を助ける作用もある健康成分です。
ビタミンB₁は、疲労回復を助ける上で欠かせない成分で、不足すると疲れやすく、動悸や息切れなどの症状が現れます。現代人には不足しやすいビタミンで、摂りすぎると体外に排出されてしまいますが、アリシンと結びつくことで、効果が持続すると言われています。

行者にんにくとダイエット:アリシンによる代謝促進と脂肪燃焼サポートの効果

ダイエットにおいても効果が認められます。アリシンの働きにより新陳代謝が良くなり、脂肪の分解を促してくれます。また糖質をエネルギーに変えるビタミンB1の効果を長持ちさせる効果があり、タンパク質と合成することで、筋肉量が増加し、延いては脂肪燃焼効果が期待できます。

行者にんにくの健康効果:コレステロール制御と生活習慣病予防の可能性

またアリシンは、血液中のコレステロール値の上昇を抑えて、生活習慣病を予防する効果があります。強いストレスにより、活性酸素が増えるとコレステロールが酸化し動脈硬化や糖尿病を起こすきっかけになります。アリシンはコレステロールの酸化を抑制する抗酸化力があり、アンチエイジングや生活習慣病にも効果があると言われています。

アリシンの感染症予防効果:食中毒原因菌への殺菌力と感染症予防への伝統的利用

さらにアリシンには感染症を予防する効果も期待できます。アリシンは強い殺菌力を持っており、サルモネラ菌やコレラ菌など、食中毒の原因菌から守ってくれます。食中毒の予防のため、薬味として利用されていた歴史もあるほどです。加えてアリシンは風邪などの感染症の予防にも役立つといわれています。日本でも古くからニンニクを風邪薬として利用していた風習があります。

行者にんにくの簡単レシピ:調理のコツと香りを活かした食べ方

行者にんにくはどんな料理にも利用でき、使い方も簡単です。

おひたし:

最もポピュラーな食べ方で、調理法は茹でるだけです。強烈な香りの成分は茹でることでお湯に溶け出て、多少薄まるので臭いを気にする人も食べられます。葉の部分は茹でるとすぐに柔らかくなってしまうので、茎の部分を先に茹でてから葉の部分をさっと茹でるのがコツです。

炒め物:

炒め物にも適しています。ジンギスカンにピッタリなことは前述の通りですが、野菜炒めの具としても、最高の役を演じてくれます。オイスターソースとの相性がよく、ご飯が進みます。

餃子:

行者にんにくは餃子の具にすれば最高の美味しさを発揮してくれます。ニンニクやニラと同じように刻んで入れますが、行者にんにくの餃子を作る際は、味が拡散しないよう、ニンニクやニラを入れずに作るのがコツです。

玉子とじ:

「ニラ玉」と同じく「玉子とじ」にしても美味しくいただけます。玉子との相性がよく、麺つゆで煮出す汁物の玉子とじにしても、玉子焼きの具としても、まろやかな風味を味わうことができます。

天ぷら:

山菜と言えば天ぷらです。行者にんにくの葉の天ぷらは、カラッとした衣に包まれたやわらかく香り立つ葉が絶妙にマッチします。タラの芽やフキノトウ、ウドなどの天ぷらと一緒にいただく「山菜天丼」は、春の訪れを感じさせてくれます。

行者にんにくの保存法

行者にんにくの保存法は湿ったペーパータオルか新聞紙に包み、野菜室で1週間ほどが目安です。長期の保存は「冷凍」「漬け」「乾燥」のいずれかです。

冷凍:

生のまま冷凍すれば細胞壁が壊れるので解凍したら柔らかくなっています。解凍後は炒め物に適しています。お浸しにする場合は先にお浸しにしてから冷凍すれば食感が残ります。

漬け:

醤油漬けは最も一般的な保存法です。塩分によりすぐには腐敗しないので、冷蔵庫での保存が可能です。そのまま生の行者にんにくと同じ調理法で使用可能です。またキムチ漬けにするとより一層香り高いキムチを味わえます。オイル漬けも可能です。漬けた醤油やオイルは行者にんにくの風味が溶け込んでいるので、捨てずに料理に使ってください。

乾燥:

天日で干すだけです。水分が程よく抜けたら、そのままジッパーに入れて冷凍してください。乾燥させても栄養価が損なわれることがなく、アイヌの人たちは冬期間の保存食にしていたと言われます。

山菜採りのリスクの高まり:身近だった行者にんにくは遠い存在に

山菜採りには遭難だけではなく、クマによる危険もあります。山奥に入れば入るほどいい山菜は採れますが、クマに遭う可能性も高まります。山奥のいい山菜はクマが守っているということにもなります。また行者にんにくは、見た目の特徴があまりなく、他の山菜、特に毒草のバイケイソウ、スズランなどとよく似ているので、山で採った行者にんにくを食べるときには注意が必要です。行者にんにくの茎の根元は赤く、網目状の繊維質のハカマ(さや)に包まれているのが特徴です。

行者にんにくの希少性と栽培の課題:庶民の山菜から「幻の山菜」へ

かつては気軽に採れる庶民の山菜だった行者にんにくも、今は希少な存在になりました。乱獲で荒れてしまった土地は、すぐには復活せず、植生が変わってしまえば永久に元には戻りません。行者にんにくは種を植えても、食べられる大きさにまで成長するには5年から7年ほどもかかります。土作りから散水調整、越冬、直射日光の調整など、栽培が難しいうえに根気を要する作物で、栽培する(できる)農家も限られます。「幻の山菜」と呼ばれるゆえんです。

十年の歳月を経て収穫へ:北海道十勝の村瀬ファームが明かす行者にんにく栽培の苦労

最後に数少ない行者にんにくの栽培農家のブログから一部を抜粋して紹介します。
「7〜10年路地栽培した行者ニンニクを収穫する。つまり10年目でやっと出荷できることになる。できるなら親指ほどの太さがそろっていれば立派な製品として出荷できる。年数不足の細いものは再び路地で栽培するため株分けして移植する。出荷できるものは土をまぶして地面で凍結し、12月にビニールハウスで加温を始める。そうすると約1カ月後に芽吹いてくるので、出荷される。」(北海道・十勝 村瀬ファームのブログより)

まとめ

北海道の山々で採れる行者にんにくは、独特の強い香りと健康効果で知られる多年草です。アリシンを豊富に含み、風邪予防や疲労回復、コレステロール管理、さらにダイエット効果も期待できます。しかし乱獲により自生する天然の行者にんにくは激減、栽培も難しいため「幻の山菜」と言われています。そんな中でも努力と研究により、栽培している農家もあります。行者にんにくは庶民の山菜から希少価値の高い高級食材へと変わりつつあります。

誤りがあった部分を修正、削除いたしました。大変申し訳ございませんでした。

Comments

  1. 阿弖流為 より:

    >地元では「アイヌネギ」とも呼ばれます。アイヌ語の「キトピロ」も含め、

    キトピロってアイヌ語かい?
    本当に調べてみた?

    1. この度は、
      キトピロのアイヌ語名称についてご質問いただき、
      誠にありがとうございます。
      誤りがあった部分を修正、削除致しました。

      本投稿の作成に当たっては、事前に調査の上、記事を作成しておりますが
      本投稿において「キトピロ」という言葉の起源、およびアイヌ語かどうかについて、
      諸説あることを明確に示せていませんでした。

      知識不足で誤った情報を発信しておりましたこと、深くお詫び申し上げます。
      今後は、より一層正確な情報を提供できるよう、スタッフ一同、知識の向上に努めてまいります。

      お客様にご指摘いただいた貴重なご意見を胸に、
      より良いサービスを提供できるよう、今後も精進いたします。

      重ねてお詫び申し上げますとともに、
      今後とも変わらぬご愛顧を賜りますよう、お願い申し上げます。

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